滝川中学三年生「東京研修旅行」に上京される

 11月21日(水)の夕刻、三泊四日の東京研修旅行のため上京してきた中学三年生の総勢140名弱と引率されて来られた酒井教頭先生、下村先生はじめ11名の先生方と早稲田大学大隈講堂横のガーデンハウスでお会いできた。今春、酒井先生から本研修旅行の計画は伺っていて、その折に東京OBからの講話を聴きたいとのご要望があり、同窓会東京支部としては黒田裕司君(新39回)を推薦して準備を進めてもらっていた。

 当日は中学生諸君の夕食後午後7時から、黒田君の講演は始まった。準備した「自分発見セミナー」のプログラムに従い、黒田君が滝川高校を卒業して、フロリダ大学に留学するまでの経緯など、プロフィールの紹介があり、黒田君のこれまでの豊富な人生経験から得たノウハウを、プロジェクターに投影しながらの講演となった。貴重な話を中学生諸君も心に留めていただけたと思う。ここにその要旨を纏めておきたい。

 フロリダ大学で会計とシステムを専攻、卒業後、就職をしたものの五年間で五つの会社を入退職するという経験の後、世界企業であるIBMに入社して現在に至っているが、中学生諸君には次のことを申し上げたい。

1.自分の人生は、自分自身の行動次第で決まっていくと思っているが、次の三つの考え方を提唱する。
 (1) 物事の整理を怠らない・・・目の前にある情報の整理
   ◎ 問題を中途半端で放置しないで考え抜き、必ず整理する。
     (図示された色つき水玉模様の整理を実験する)
 (2) 数字を考える
   ◎ 提示されている数字の持つ意味を考える。
     (オリンピック各国のメダル獲得数の分析の事例)
 (3) 物事はタテからもヨコからも眺めてみる
   ◎ 問題の切り口を多方面から、見方を変えて凝視する。
     (図示された記号を読み取る事例)

2.人生には目標を設定して突き進むことが肝要である。
 (1)当時の自分はアメリカ文化に憧れ留学し、苦手な英語を克服する。
   ◎ 「自分は駄目な男だ」とは、間違えても思わない。
 (2)設定した目標は、自分がとことん納得しているものであること。
   ◎ 自分が納得していない目標は、途中で挫折する。

そのほか、人生問題の解決の「答えは一つではない」とか、「論理は正しく組み立てて主張すること」とか、「決めたことは最後まであきらめないで、粘り強くやり抜く」とか、「明るく、楽しく、前向きに生きていってもらいたい」という話を随所でされた。

その後、質問の時間になって、中学生諸君の質問がまた素晴らしかった。次のようなやり取りが黒田講師との間でなされた。

質問1.「これまでの人生で後悔したことはありましたか。」
答 「中学、高校、大学時代には、もっと勉強をしておけば良かったと思う。社会人になって生涯勉強をしていかねばならないと感じたとき、学校時代は楽しかったが、勉強をしていなかったことを悔やんだ。」

質問2.「アメリカ留学時代の経験で役に立ったことはありましたか」
答 「アメリカという国はやはり銃の所有が許される社会である。何度かは身の危険を感じることもあった。ただ、そういう社会を経験したことで、今は、自分は簡単には死なないという自信につながっていると思う。」

質問3.「目標を設定してもなかなか守れません。途中で挫折しない方法はありますか」
答 「立てた目標がしっかりと自分の中で納得されているのか。自分が本当にこれだと決めていない目標では、なかなか結果に結びつかない。」

質問4.「現在は現在として、まだ将来というか、次にやりたいことはありますか。」
答 「若いときに憧れたベンチャービジネスというか、新しいビジネスを立ち上げるという夢は捨てていない。将来、機会があったら挑戦してみたい。」

質問5.「今、日本で仕事をしていて英語を使われますか。」
答 「このところ上司がアメリカの人に代ったので、ますます英語を喋る機会が増えてきた。先ほども言ったが、これだけ英語が苦手であった自分が喋れるから、英語が苦手といった諸君は、必ず喋るようになれると思って欲しい。これから成長して社会人になる諸君は、英語を喋れるのが普通になるのではないか。」

質問6.「滝川時代に部活はされていましたか。勉強との両立は出来ましたか」
答 「勉強との両立ということでは何とも言えないが、サッカー部とゴルフ部に所属しで楽しく充実した時間を過ごせた。サッカー部では、丁度、滝川二高にサッカー部長はじめ選手がシフトした時代だった。」

以上が今回の講演内容のすべてであるが、締め括りとして、黒田講師は「これから先の日本の将来を背負って立つのは諸君であり、十年後、二十年後の自分を想定して、世界に伍して発展する日本のために努力をして欲しい」と、日本の国際競争力が徐々に低下しているデータを示して中学生諸君を激励し講演は終了した。

最後に中学生諸君の拍手の大きさを聞いたときに、黒田講師の話は中学生に理解して貰えたという確信と小生自身も充実した時間を持てたことに感謝した。なお、この講演には応援のために同窓会東京支部の酒井芳倫(新51回)幹事も出席していて、「中学を卒業する前の研修旅行に相応しい素晴らしい講演でした」と感想をもらしていた。なお、末筆ですが、引率をされてきた先生方のご努力に敬意を表します。お疲れ様でした。

平成24年11月25日

(東京支部 芦尾芳司記)